【この記事の監修者】工藤紀子医師 小児科専門医・医学博士。 順天堂大学医学部卒業、同大学大学院 小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。 現在2児の母。「育児は楽に楽しく安全に」をモットーに、年間のべ1万人の子どもを診察しながら、インスタグラムや講演を通じて子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。
産後休む暇もなく走り続けた4ヶ月。ママもパパも、親としての成長がみられる一方で、この頃から赤ちゃんにも個人差がでてきます。特にミルクを飲む量に関して、不安を感じている人も多いでしょう。
そこで今回は生後4ヶ月の赤ちゃんが飲むミルクの量について紹介。目安から外れていても大丈夫な判断基準と、ミルクを飲まないときの理由などにも触れているので、赤ちゃんが健やかに育つことはもちろん、ママ・パパも笑顔で育児ができるように本記事で一緒に疑問や不安を解消していきましょう。
Contents
生後4ヶ月のミルクの量
一般的に言われている、生後4ヶ月の赤ちゃんが1日に必要なミルクの量は下記のとおりです。
- 1回あたり:160~200ml
- 1日の回数:5~6回(4~6時間おき)
- 1日の総量:800~1,200ml
上記のとおり、目安の量には幅があります。なぜなら混合ミルクなのか、完全ミルクなのか、子どもの個性や外気温などの状況などによっても必要とされる量が異なるからです。そのため、基本的には赤ちゃんが欲しがるタイミングで欲しがる量をあげても問題ありません。
■混合ミルクの授乳スケジュール例
もし1日に飲む量が目安よりも少なかったとしても、赤ちゃんが元気で体重が増えていれば特段、心配の必要はありません。いたずらに心配するよりも、その子の個性だと思い、リラックスして授乳を楽しみましょう。次に混合ミルクの場合と、完全ミルクの場合の目安量を見ていきましょう。
混合ミルクの場合
混合ミルクで育児をしている場合は先に母乳をあげて、足りてないようであればミルクを足します。母乳の量は授乳前後の体重差で量れますが、生後4ヶ月くらいになると母乳の量も安定してくるので、あえて量る必要はないでしょう。
母乳の後は、40~60ml/回のミルクを足します。これも子どもの個性などに左右されるため、まだ欲しそうな様子が見られる場合は、さらにミルクを足してあげましょう。母乳のあとにミルクを飲みたがらない場合は、母乳だけで満足していると言えるので、無理してミルクを足す必要はありません。
一方で、授乳の時間になっても母乳を飲みたがらない子もいます。その場合の原因の一つに、乳頭混乱を起こしていることが考えられます。メーカーや種類にもよりますが、哺乳瓶の乳首は赤ちゃんが吸いやすいように柔らかくできており、少しの力でミルクが出るようになっているのに対して、母乳は吸い出すのにパワーが必要です。
そのため、母乳を拒否している可能性があるので、哺乳瓶の乳首を固めのタイプに変更してみると改善がみられることがあります。
完ミ(完全ミルク)の場合
完全ミルクの場合は、1回あたり160~200mlの目安を参考にミルクをあげましょう。ただし、目安はあくまで目安なので、それ以上を欲しがる子や目安以下の量で満足する子もいます。
大人でも言えることですが、お昼ご飯を食べ過ぎた日は夕飯が進まないこともあります。逆にお昼ご飯を食べられずにお腹が空いて迎えた夕飯はたくさん食べられるでしょう。それは赤ちゃんにおいても同じです。そのため、欲しがれば欲しがるだけあげても良いし、反対に飲まない場合は無理してあげる必要はありません。
また、ミルクを飲む量が少ないからといってミルクの量が足りていないかというと、一概にそうとは言えません。ミルクが足りているかどうかの判断は赤ちゃんに聞くのが一番。ミルクの過不足について、赤ちゃんが出すサインは次項で解説します。
ミルクの量が足りているかどうかの判断
ミルクの量が足りていないかどうかは、下記の項目で判断できます。
- 機嫌が良い
- 順調に体重が増えているか
- おしっこの回数
- 病院やクリニックに相談する
ただし、上3つにおいては家庭でできる簡易的な判断方法です。そのため、心配で気にしすぎるくらいなら、定期的に病院やクリニックに相談して不安を払拭しましょう。
機嫌が良い
起きているときに元気があり、笑顔がみられるなど機嫌が良い時間が長い場合は、特にミルク不足を心配する必要はありません。反対にミルクが足りていない場合は、機嫌が悪く、ぐずりやすくなるのでいつもより多めに量をあげてみると良いでしょう。
また、昼間の授乳で十分な量のミルクが飲めていれば、夜間の授乳回数が減り、赤ちゃんによっては7~8時間まとめて寝てくれるようになることがあります。
順調に体重が増えているか
厚生労働省が公開している「乳幼児身体発育評価マニュアル」によると、生後3ヶ月から6ヶ月までは1日15~20gの体重増加が目安とされています。ただし、ミルクを飲む量や排便などの状況によって、1日の増量値が目安以下であることも珍しくありません。しばらく体重に変化がなくても、数日の間に急に増えることもあるなど、体重の増加においても個人差があることを覚えておきましょう。
そのため、体重が増えているかどうかを気にして、毎日チェックする必要はありません。定期健診の体重測定で、成長曲線に沿った右肩上がりの増加が見られれば、問題ないと言えるでしょう。
おしっこの回数
生後4ヶ月の赤ちゃんが1日におしっこをする平均回数は10~15回、量は25~50ml程度だと言われています。しかし、24時間べったりくっついて観察しているわけではないので、いつ、どのくらいおしっこをしているかわからないのが当たり前です。そのため、これまでみてきた間隔を基準にして、おしっこの量や回数が少ないと感じた場合は、飲む量が少ないかもしれないと判断できるでしょう。
ウンチが出ているか
おしっこと合わせてウンチの様子も気にしておきたいところです。生後3ヶ月頃になると、腸内で水分を吸収するため、水気の多いゆるゆるウンチから、水気が少なくおむつにへばりつくようなウンチになります。回数は1日に2~3回程度に減って安定する頃ですが、なかには4~5日に1回の子もいるため、あまり心配しすぎないようにしましょう。
ただし、いつもよりもウンチの固さがゆるかったり、ウンチが出ない間隔が長い場合は、飲ませすぎている可能性があります。その場合は普段よりもミルクの量を減らして様子を見てみると良いでしょう。
赤ちゃんが泣く原因には「かまってほしい」「抱っこしてほしい」「何か気持ち悪い」など、お腹が減る以外にも考えられます。ミルクの前に、まずはあやしてみるのも一つの手です。
病院やクリニックに相談する
病院やクリニックでは、手足の動きや表情、頭囲の大きさなど、総合的な観点からミルクの量、つまり赤ちゃんの発育に問題がないかどうかをみてくれます。先に紹介したチェック方法はあくまで家庭でできる簡易的な方法にすぎないため、ミルクの量に不安を抱えている場合は、病院やクリニックで判断してもらうと良いでしょう。
また、自治体にもよりますが、赤ちゃんが1歳になるまでに3~4回ほど健診を受けることになります。ほとんどの場合、毎回体重を量ることになるので、その際にミルクの量について相談してみるのもおすすめです。
生後4ヶ月の赤ちゃんがミルクを飲まないときの理由
生後4ヶ月の赤ちゃんがミルクを飲まない理由は、「1回の量が少ないのか」、「1日のトータルの量が少ないのかあ」によって異なります。いずれにしても「飲まない」ことが問題ではなく、体重の増え方や機嫌などをみるようにしましょう。体重の増えが悪い、または下痢や嘔吐などの思い当たる原因がないのに体重が減っているなどの場合は、病気の可能性も否めないので、病院やクリニックに早めに相談することをおすすめします。
1回あたりの飲む量が少ないとき
たとえば1回120~140mlなど、目安量の160~200mlに満たない場合は、下記の理由が考えられます。
- それほどお腹が空いていない
先にも少し触れていますが、大人でも前回の食事が胃に残っているため、あまり食べられないということは往々にしてあります。それは赤ちゃんも同じ。赤ちゃんによっては、1日のうちで1回は大量に飲んで、あとはちょこちょこ飲むという飲みムラがある子もいるので、赤ちゃんの要望に合わせてミルクを与えるようにしましょう。
- ゲップが出なくて苦しい
ミルクを飲んでいる途中で空気を一緒に飲んでしまい、お腹を圧迫している可能性があります。その場合は、一旦休憩して、ゲップが出せるように背中を叩くなどしてあげましょう。ゲップが原因であれば、ゲップが出たあとに再度ミルクをあたえると飲んでくれることもあります。
- 体勢のせいで飲みづらい
横抱きでミルクをあげている場合、胃袋も横に倒れているため、少ない量でも満腹感を得てしまうことがあります。その場合は、少し身体を起こしてあげると再び飲み始めることもあります。
生後4ヶ月の赤ちゃんの授乳間隔
生後4ヶ月頃になると、昼間の授乳間隔が4~5時間ほど空くことも珍しくありません。まだまだ個人差が大きいところですが、なかには夜間の授乳がなくなる子もいるでしょう。
- 授乳間隔が長いときの理由
授乳間隔が長くなる理由には「一度に飲める量が増えた」「活動量の増加により睡眠時間が長くなった」などが考えられるでしょう。先にも紹介したとおり、機嫌が良く体重の増えも順調で、おしっこの回数にも問題なければ、授乳間隔が長くなっても特段、気にする必要はありません。
- 授乳間隔が短いときの理由
授乳間隔が短いことの理由には「胃袋が小さい」「成長期」「(混合ミルクの場合は)おっぱいが好き」などが考えられます。ママ・パパどちらか一方に負担がかかるのは好ましくないので、ミルクの担当を交互にするなど工夫して睡眠不足にならないようにしましょう。
⇒記事「生後4ヵ月の授乳間隔・回数|短くなった・長くなったときの理由と対処法も解説」
生後4ヶ月の赤ちゃんの睡眠時間
生後4ヶ月頃になると1日の睡眠時間が13~14時間程度になります。この時期にはミルクやおっぱいを吸う力が強くなり、1回で多くの量を飲めるようになる、寝返りをうつなど運動量が増える、内臓の発達によりオムツ替えの回数が減るといった理由で、1回の睡眠時間も長くなってきます。また、昼夜の区別がついてくるので、夜には7~8時間ほどまとまって寝てくれる子もいるでしょう。
個人差はありますが、こうした赤ちゃんの成長にともないママ・パパもの睡眠時間も長めにとれるようになります。しかし、夜泣きは、長い子で1歳から1歳半、もしくはそれ以降も続くことがあるので、家事もそこそこに休めるときは一緒にお昼寝をするなど、睡眠不足にならないための工夫が必要です。
生後4ヶ月から離乳食を開始しても大丈夫?
離乳食を開始するのに最適なタイミングは、生後5ヶ月から6ヶ月の間が定説です。赤ちゃんには生まれながらに哺乳反射が備わっており、この反射は生後5~7ヶ月で消失すると言われています。スプーンを口に入れて、舌で押し返す場合は哺乳反射が残っていると考えられるため、離乳食の開始は5ヶ月になるまで待ったほうが良いでしょう。月齢や哺乳反射以外にも下記のような発達がみられる場合は、離乳食をはじめるのに最適なタイミングだと判断できます。
- 首がすわっている
- 支えがあればおすわりできる
- 大人が食べている様子に興味を示す(口をもぐもぐさせるなど)
- よだれを垂らしている
- うつ伏せに寝かせると、両手でグッと身体を持ち上げる
赤ちゃんの発達には個人差があるため、5ヶ月よりも早くに哺乳反射が消失する子もいます。しかし、消化機能や腎機能が未発達であることも多いため、生後4ヶ月からの離乳食開始はおすすめできません。早めに始めたい事情があるかもしれませんが、赤ちゃんの成長に合わせて離乳食は生後5ヶ月からスタートするようにしましょう。