【この記事の監修者】工藤紀子医師 小児科専門医・医学博士。 順天堂大学医学部卒業、同大学大学院 小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。 現在2児の母。「育児は楽に楽しく安全に」をモットーに、年間のべ1万人の子どもを診察しながら、インスタグラムや講演を通じて子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。
生後3ヶ月頃になると一般的には授乳間隔が整うと言われていますが、赤ちゃんの個人差が大きい時期でもあるので、まだまだ間隔が短く、回数も多いこともあります。また、遊び飲みやコリック(黄昏泣き)で、授乳が上手くいかないこともあり、疲れが溜まっているママ・パパも多いでしょう。
今回は、生後3ヶ月の授乳間隔や回数など、授乳にまつわるお話です。赤ちゃんが健康なことはもちろん、ママ・パパも楽しく育児ができることが大切なので、授乳間隔について知識を深め、その対処法を考えていきましょう。
Contents
生後3ヶ月の授乳間隔・回数
生後3ヶ月になると、おっぱいやミルクを飲む力や体力がつきはじめるため、1回に飲む量が増えます。そのため、生後2ヶ月のときと比べて若干、授乳間隔が長くなり、昼夜の区別がつきはじめることも相まって、なかには夜間に4~5時間程度まとまって寝てくれる子もいます。
ただし、授乳間隔や回数、飲む量は個人差が大きいため、一概には言えません。体重が増えていれば特に問題はないので、授乳間隔や回数に、過度に敏感になる必要はないでしょう。
母乳育児の場合
母乳育児の場合の授乳間隔・回数の目安は下記のとおりです。
- 間隔:3~4時間おき
- 回数:5~8回
上記はあくまで目安なので、これよりも多い場合や少ない場合もあります。一般的に母乳はミルクよりも消化が早いと言われているため、特に完母(完全母乳育児)の場合は、混合育児に比べて授乳間隔が短く、回数も多くなりやすい傾向にあります。
1回の授乳にかける時間の目安は、片側10~15分程度です。ただし、時間で区切ってしまうと、赤ちゃんがまだ飲み足りない場合もあります。両側終えた段階でもまだぐずる場合や飲み足りなさそうにしている場合は、時間を気にせず満足するまで与えてあげましょう。
混合育児の場合
混合育児の場合の授乳間隔・回数の目安は下記のとおりです。
- 間隔:3~4時間おき
- 回数:5~6回
母乳育児と同じく間隔は3~4時間おきですが、混合育児の場合はミルクも併用するため、回数は若干減ります。ミルクの消化に時間がかかる分、間隔を少し長めにとってあげても良いでしょう。
混合育児の場合は、まず母乳をあげてから足りない分をミルクで補填します。母乳育児と同じく片側10~15分を目安にあげたら、30~40ml程度のミルクを足して様子をみます。まだぐずったりまだ欲しそうにしたりしている場合は、再度30~40mlほどミルクをあげましょう。
この時期は母乳の量も安定してくるので、ミルクを拒否する子もいます。その場合は、母乳の量が足りていると言えるため、無理にミルクをあげる必要はありません。また、夜間にまとまった時間寝てもらうようにする場合は、母乳をお休みしてミルクを160~200ml与えるのがおすすめです。消化に時間がかかる分、母乳を飲ませるときよりも長めに寝てくれることがあるかもしれません。
⇒記事「生後3ヶ月のミルクの量はどのくらい?1日の授乳スケジュールや目安を解説」
生後3ヶ月の赤ちゃんの変化
生後3ヶ月になると、授乳に関して下記のような変化がみられるようになります。
- 授乳間隔が整ってくる
- 遊び飲みや飲みムラがでてくる
- 赤ちゃんによって個人差がでてくる
だんだんと生活リズムがついてくることや、体力がついてくることで授乳の間隔がなんとなくでも定まってくる時期です。また聴覚や視覚が発達してくる時期でもあるので、授乳の時間に周囲が気になり、遊び飲みを始める子も。ただし、授乳間隔や回数と同じで、発育においても個人差があるので、目安を気にしすぎないようにしましょう。
授乳間隔が整ってくる
生後3ヶ月になると母乳をあげるママも、母乳を飲む赤ちゃんもそれぞれが上達するため、授乳がスムーズになります。その結果、母乳の分泌量も安定するため、これまでの頻回授乳から少しずつ授乳の間隔が空くようになり、間隔も一定になってきます。また、授乳に慣れてくることで、これまで感じていた乳首の痛みや白斑の悩みから徐々に解放される方もいるかもしれません。
昼夜の区別がつき始める時期でもあるので、徐々に夜間の睡眠時間も長くなっていく傾向にあり、ママ・パパも睡眠時間を確保できることがあります。
遊び飲みや飲むムラがでてくる
光や音に興味を持ち、反応しだすのもこの時期からです。そのため、周りの様子が気になって授乳に集中しなくなる遊びのみをすることもあるでしょう。また満腹中枢が発達してくるのも、この頃からです。それにより自分の「適量」がわかるようになるため、与えられただけ飲んでいた頃と比べ、授乳毎の飲む量にムラがでてきます。
大人でも言えることですが、小腹が減ったときと、がっつりお腹が減ったときでは食べる(飲む)量が違って当然です。そのため、1回もしくは1日の飲む量にムラがあったとしても、体重が増えていれば特段、心配する必要はありません。
赤ちゃんによって個人差がでてくる
先に説明した「授乳間隔」や「遊び飲み・飲みムラ」は一般的に言われていることであって、すべての赤ちゃんに当てはまるわけではありません。授乳間隔が短いままの子もいれば、授乳時には一生懸命飲むことに集中する子もいます。あくまで目安であるため、授乳量や回数などの「目安」に惑わされることなく、その子の個性や特性をみてあげるようにしましょう。
授乳間隔が短い(短くなった)ときの理由
生後3ヶ月でも授乳間隔が短い、もしくは短くなることがあります。その場合の理由としては、下記のようなことが考えられます。
- 個性による違い
- 満腹中枢ができてくる
- ミルクの量が少ない
授乳間隔が短いと、それだけママ・パパの睡眠時間や自由な時間もなくなるので、我が子は可愛くても大変です。しかし、成長とともに授乳間隔は長くなっていくので、もう少しの辛抱です。ただし、気を張りすぎて疲弊してしまっては身も蓋もないので、授乳時間が短い場合は家事そっちのけで休めるときに休むことにフォーカスするのも大切です。
また、授乳時間が短いと感じる要因の1つに「泣く=授乳」と考えがちな点が挙げられます。赤ちゃんが泣く理由は喉の渇きや空腹だけではありません。構ってほしい、寝づらいなどの理由があるため、あやしてみたり、遊んでみたり、リズム良く背中をトントンしてみると落ち着くこともあります。そのため、「泣く=授乳」の固定概念を捨ててみるのも良いかもしれません。
個性による違い
赤ちゃんのなかには、1回に大量に飲むのが好きな子と、ちょこちょこ飲みが好きな子がいます。また、おっぱいが大好きな子もいるなど、赤ちゃんにも個性があり、その個性が授乳間隔を短くしていることがあります。完全母乳で育児をしている場合は、平均より間隔が短くなることも珍しくないため、寝不足がツラく心が折れそうになることもあるでしょう。
混合育児の場合は、寝る前の授乳時はミルクだけにすると、3~4時間、長いと4~5時間まとまって寝てくれることもあります。母乳育児の場合は搾乳器で母乳を絞り、ストックを作っておくようにしましょう。そうすることで、ママがツラいときにパパが代わりに温めた母乳を哺乳瓶であげることもできます。
【先輩ママの声】マニュアルどおりにはいかない飲む量はマニュアルどおりなのに、授乳間隔がなかなか空かずに大丈夫なのか不安になりました。特にSNSなどで、生後1ヶ月半にもかかわらず6時間寝る子が多くて・・・。我が家は授乳間隔が3時間半くらいしか空かないので焦っていましたが、良く寝る子もいればそうじゃない子もいると聞いて、良い意味で諦めがつきました。 |
満腹中枢ができてくる
生後3~4ヶ月になると満腹中枢が発達してくるので、赤ちゃんが飲みたい量しか飲まなくなります。そのため、1回に飲む量が少ないときもあり、一般的に言われる授乳間隔よりも短くなることもでてきます。この場合は、吐き戻しなどに繋がるため、授乳間隔を延ばそうと無理矢理飲ませるのはNG。赤ちゃんのペースで授乳を行いましょう。
その際、ママ・パパどちらかだけに負担がかかるのは好ましくないので、夜間は授乳を交代制にするなど工夫すると良いでしょう。
【先輩ママの声】満腹なんだなと見ていてわかるように4ヶ月の子を育てるママです。3ヶ月頃から満腹中枢が発達すると聞いていましたが、実際に感じるまでは端から見てわかるものだろうか?と疑問を抱いていました。しかし、これまでよりも飲む時間が短くなって、自分から口を離すようになったのをみた時に、「あ、こういうことか」と実感。授乳間隔が短い場合もありますが、何より成長を感じて嬉しくなりました。 |
ミルクの量が少ない
母乳はミルクと違ってどのくらい飲んでいるかわかりづらいため、場合によってはその後のミルクの量が足りていないこともあります。それが原因で授乳間隔が短くなっていることも考えられるので、混合育児の場合はミルクの量を足してみるのも一つの手です。
また、1回の授乳で片側からしか授乳していない場合は、どちらかの母乳の出が悪いということも考えられます。たとえば右は出が良く、左は出が悪い場合、右側で飲ませたときは長めに眠ってくれるけど、左の出が悪い方で飲ませたときは授乳間隔が短いといった感じです。これは授乳時の抱っこの仕方を変えて、乳首の含ませ方が変わるだけでも改善がみられる場合があるので、普段と違う抱き方も試してみることをおすすめします。
【先輩ママの声】長いと3時間、短いと1時間半母乳とミルクの混合育児をしています。母乳で満足するときもあれば、ミルクを160ml足すときもありマチマチです。母乳とミルクの関係か、長い場合は3時間、短い場合は1時間半、授乳間隔が空いていました。 |
授乳間隔が長い(長くなった)ときの理由
授乳間隔が平均以下の赤ちゃんがいる一方で、平均よりも長く間隔が空く子もいます。その場合に考えられる理由には、下記のようなものがあります。
- 一回に飲む量が増える
- 夜まとまって寝る時間が増える
ほかの子や目安と比べて授乳時間が長いと、授乳回数も少なくなるため、「発育に良くないんじゃないか」と不安になる人もいるでしょう。しかし、「授乳回数が少ない=哺乳量が少ない」ではありません。体重が増えるなど、順調に成長していれば、授乳間隔が長くても特に問題はないので気にしすぎないようにしましょう。
一回に飲む量が増える
赤ちゃんの飲み方が上達することによって、母乳の分泌量も安定。1回に飲む量が増えることによって、授乳間隔が長くなることもあります。ただし、体重やおしっこの回数・量が減った場合は少し心配なので、遠慮せずに小児科を受診してみてましょう。問題なければ安心できるし、何かあれば早急に対処ができます。
ただでさえ思い通りにいかないのが育児ですから、心配ごとによる精神的な負担は早めに解消しておくに限ります。反対に体重が増えていて、おしっこの回数が変わらない場合は、無理に起こして授乳したり、小児科を受診したりする必要はないでしょう。
【先輩ママの声】飲む量、分泌量ともに安定してきた母乳から1回に飲む量が増えたようで、直後のミルクを苦しそうに飲むこともありましたが、様子を見ながら続けていたら、今まで飲んでいた量でもミルクを残すように。授乳間隔も長くなってきて、ちょっと心配になるくらいです。 |
夜まとまって寝る時間が増える
生後3ヶ月頃になると光や音に反応を示すようになり、だんだんと昼夜の区別がつくようになります。生活リズムが整い始める時期でもあるので、赤ちゃんによっては夜にまとまって寝てくれることもあるでしょう。それにともない、夜間の授乳間隔が長めに空く場合もあります。
【先輩ママの声】夜4~5時間寝られるように生後3ヶ月に入ってから夜は6時間ほど授乳間隔が空くようになりました。これまで頻回授乳で、夜も1人で授乳してきたので、ようやく・・・といったところです。まとめて4~5時間寝られることがこれほど嬉しいと思う日がくるとは思ってもいませんでした。 |
授乳間隔や回数で悩んだら病院・クリニックに相談
授乳間隔や回数はあくまで一般的な目安です。そのため、目安から外れていたとしても過度に心配する必要はありません。その子の個性だと思って、赤ちゃんのペースに合わせてあげましょう。
ただし、授乳の間隔や回数は、ママ・パパの睡眠時間と密接な関係にあります。いつか楽になるときが来るとわかっていても、ツラいこともあるでしょう。そんなときは我慢せずに病院やクリニックに相談することをおすすめします。ママ・パパであれば誰もが通る道ではありますが、育児を楽しめるように早めに専門機関に相談して不安を払拭しましょう。