【この記事の監修者】工藤紀子医師 小児科専門医・医学博士。 順天堂大学医学部卒業、同大学大学院 小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。 現在2児の母。「育児は楽に楽しく安全に」をモットーに、年間のべ1万人の子どもを診察しながら、インスタグラムや講演を通じて子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。
生後3ヶ月にもなると、ミルクを飲む量に個人差がではじめるのが一般的です。しかし、そのことについてSNSや同月齢の子を持つ友人から聞いた話などで得た情報で「うちの子大丈夫かな」と不安になることもあるでしょう。
そこで今回は、一般的な生後3ヶ月のミルクの量を紹介。赤ちゃんが健康で、ママ・パパが楽しく育児をできるように、目安より少ない場合でも問題ない場合の判断基準やミルクを飲まないときの理由にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
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生後3ヶ月のミルクの量
一般的に言われている、生後3ヶ月の赤ちゃんが1日に必要なミルクの量は下記のとおりです。
- 1回あたり:160~200ml
- 1日の回数:5~6回(4時間おき)
- 1日の総量:800~1,200ml
上記からもわかるとおり、ミルクの量には幅があります。理由は混合ミルクなのか、完全ミルクなのかにもよりますが、子どもの個性や外気温などの状況によっても必要な量が変わってくるからです。そのため、基本的には赤ちゃんが欲しがる量をあげても問題ありません。
■混合ミルクの授乳スケジュール例
もし1日に飲む量が目安よりも少なかったとしても、赤ちゃんが元気で体重が増えていれば特段、心配の必要はありません。いたずらに心配するよりも、その子の個性だと思い、リラックスして授乳を楽しみましょう。次に混合ミルクの場合と、完全ミルクの場合の目安量を見ていきましょう。
混合ミルクの場合
混合ミルクの場合は先に母乳をあげて、足りていないようであればミルクを足します。母乳の量は赤ちゃんが飲む前と飲んだあとの体重差で確認できますが、授乳毎に量るのは体力的に大変なうえに、何より神経がすり減ります。そのため、母乳の量を量るのは多くても2週間に1回程度で良いでしょう。母乳の量が少なかったとしても、ミルクを足せば何の問題もないし、ママが愛情をかけていることに変わりはないので思いつめる必要はありません。
母乳をあげ終わったら、ミルクを足します。すでに母乳をあげているので、ミルクは1回30~40mlを目安に足していきます。ただし、これも子どもの個性や状況によるため、ミルクを足してもまだ欲しそうな様子が見られたら、再度ミルクを足しましょう。この際、ミルクを飲みたがらない場合は、母乳だけで満足している可能性が高いので、無理してミルクを足す必要はありません。
反対に母乳を飲みたがらない赤ちゃんもいますが、これは乳頭混乱を起こしていることが考えられます。種類にもよりますが、哺乳瓶の乳首は赤ちゃんが吸いやすいように柔らかく作られており、少しの力でミルクが出るため、吸い出すのにパワーが必要な母乳を拒否することもあります。その場合は、哺乳瓶の乳首を固めの種類に変えてみると、改善がみられるでしょう。
完ミ(完全ミルク)の場合
完全ミルクの場合は、前述の「1回あたり160~200ml」を目安にミルクをあげましょう。ただし、なかには完全ミルクであっても1回あたり160ml以下で満足してしまう場合もあります。
大人でもあることですが、前の食事が消化されずに胃に残っており、食事を残すこともあります。それは赤ちゃんといえど同じことです。そのため、無理に飲ませるのではなく、回数を多くするなどして対処してみましょう。または、ゲップが出なくて苦しいため、途中で飲むのをやめることも考えられます。その場合は、一度ゲップを出してから再度、哺乳瓶を口に持っていくと飲みはじめます。
また、1回に飲む量が少ない、1日の目安量に達していないからといってミルクの量が足りていないか、というとそうではありません。ミルクが足りているかどうかは赤ちゃんがサインを出してくれるので、よく観察することが大切です。そのサインについては次項で詳しくみていきましょう。
ミルクの量が足りているかどうかの判断
ミルクの量が足りているかどうかは、下記の項目で判断できます。
- 機嫌が良い
- 順調に体重が増えているか
- おしっこの回数
- 病院やクリニックに相談する
ミルクを飲む量が目安に達していない場合でも、機嫌が良く体重が増えており、おしっこの量・回数ともに問題なければ心配する必要はありません。しかしそうは言っても、特にはじめての育児は不安が多いものです。先の3つは簡易的な方法であるため、心配で気を揉むくらいなら、定期的に病院やクリニックに相談して不安を取りのぞきましょう。
機嫌が良い
起きているときに元気で機嫌が良い時間が長めに続く場合は、特にミルク不足を心配する必要はありません。逆にミルクが足りていない場合は、ぐずりやすくなるのでいつもより多めの量あげてみると良いでしょう。昼間の授乳で十分な量のミルクが飲めていれば、夜間の授乳回数が減り、赤ちゃんによっては5~6時間程まとまって寝てくれることが多くなります。
順調に体重が増えているか
厚生労働省が公開している「乳幼児身体発育評価マニュアル」によると、生後3ヶ月から6ヶ月までは1日15~20gずつの増加が目安とされています。ただし、この時期も赤ちゃんによる個人差が激しいので、ぐんぐん大きくなる子もいれば、のんびり成長する子もいます。出生時に低体重で生まれたなどの理由により、成長曲線から外れることもありますが、いずれにしろ少しずつでも右肩上がりに体重が増えていればミルクの量が足りていると考えても大丈夫でしょう。
また、赤ちゃんによっては、しばらく体重が横ばいだったかと思えば、その数日間を取り戻すように急成長する子もいます。そのため毎日体重を量る必要はなく、10日に1回、または1ヶ月に1回のペースで体重の増加を観察するくらいの気持ちでいると良いでしょう。
おしっこの回数
生後3ヶ月までは1日15~20回、生後3ヶ月以降は10~16回程度、おしっこをすると言われているため、1日10~20回の間でおしっこをすればミルクの量が問題ないと考えられます。飲んだら出るのが自然の摂理であるため、もしおしっこの量がいつもより少ないと感じる場合は、まずは飲む量が少なくなっていないかどうかを疑ってみましょう。
ウンチが出ているか
おしっこと合わせてウンチの様子も気にしておきたいところです。生後3ヶ月頃になると、腸内で水分を吸収するため、水気の多いゆるゆるウンチから、水気が少なくおむつにへばりつくようなウンチになります。回数は1日に2~3回程度に減って安定する頃ですが、なかには4~5日に1回の子もいるため、あまり心配しすぎないようにしましょう。
ただし、いつもよりもウンチの固さがゆるかったり、ウンチが出ない間隔が長い場合は、飲ませすぎている可能性があります。その場合は普段よりもミルクの量を減らして様子を見てみましょう。
赤ちゃんが泣く原因には「かまってほしい」「抱っこしてほしい」「何か気持ち悪い」など、お腹が減る以外にも考えられます。ミルクの前に、まずはあやしてみるのも一つの手です。
病院やクリニックに相談する
病院やクリニックでは、手足の動きや表情、首のすわり、頭囲の大きさなどから総合的にミルクの量、つまり赤ちゃんの発育に問題がないかどうかを診てくれます。先に紹介したチェック方法はあくまで家庭でできる簡易的な方法にすぎないため、ミルクの量に不安を抱えている場合は、病院やクリニックで相談すると良いでしょう。
また、自治体にもよりますが、赤ちゃんが1歳になるまでに3~4回ほどの健診を受けることになります。ほとんどの場合、毎回体重を量ることになるので、その際にミルクの量に関する不安を相談してみるのもおすすめです。
生後3ヶ月の赤ちゃんがミルクを飲まないときの理由
生後3ヶ月の赤ちゃんがミルクを飲まない理由は、「1回の量が少ないのか」、「1日のトータルの量が少ないのか」によって異なります。いずれにしても、「飲まない」ことは特に問題ではありません。体重の増えが悪い場合や、下痢や嘔吐など思い当たる原因もなく体重が減少している場合は病気の可能性も否めないので、病院やクリニックに早めに相談することをおすすめします。
1回あたりの飲む量が少ないとき
前述した目安量(160~200ml)に満たない、たとえば、1回あたり120~140mlしか飲まないなど、1回の飲む量が少ない場合は下記のような理由が考えられます。
- それほどお腹が空いていない
先にも少し触れていますが、大人でも前回の食事が胃に残っているため、あまり食べられないということは往々にしてあります。それは赤ちゃんも同じ。赤ちゃんによっては、1日のうち1回は大量に飲んで、あとはちょこちょこ飲むという飲みムラが子もいるので、赤ちゃんの要望に合わせてミルクを与えるようにしましょう。
- ゲップが出なくて苦しい
ミルクを飲んでいる途中で空気を一緒に飲んでしまい、お腹を圧迫している可能性があります。その場合は、一旦休憩して、ゲップが出せるように背中を叩くなどしてあげましょう。ゲップが原因であれば、ゲップが出たあとに再度ミルクをあたえると飲んでくれることもあります。
- 体勢のせいで飲みづらい
横抱きでミルクをあげている場合、胃袋も横に倒れているため、少ない量でも満腹感を得てしまうことがあります。そのため、首がすわってきたら少し身体を起こして授乳してあげると良いでしょう。
1日トータルの飲む量が少ないとき
たとえば1日に飲む量が600~700mlなど、目安量(800~1,200ml)に達しない場合は、満腹中枢の発達が関係していると考えられます。これまでは満腹かどうかもわからず、与えられるまま飲んでいることが多いですが、満腹中枢が発達しだすこの頃から、飲む量が減ることもあります。自分にとっての「適量」を把握できるようになった証拠なので、体重が増えない、むしろ減るといった傾向がなければそのまま様子を見てあげましょう。
また、前項で挙げた「ゲップが出ない」「体勢のせいで飲みづらい」などが原因で、1日のトータル量が減っていることも考えられるので、1回ごとの授乳を工夫してみることもおすすめします。
授乳間隔が空かないときの理由
生後3ヶ月になると、日中の授乳量が増えるため夜間はある程度まとまって寝てくれるようになる子が増えますが、一方で授乳間隔が短い子もいます。特に夜間の授乳間隔が短いままだと、ママやパパは睡眠不足となりツラい日々を過ごすことになるでしょう。なぜ授乳間隔が空かないのか、それは下記のような理由が考えられます。
- 少しずつ飲むのが好き
- 急成長の時期で量が必要
- (混合ミルクの場合は)おっぱいが大好き
授乳間隔については赤ちゃんの個性や成長度合いが大きく関係してくるので、これといって長くする方法はありません。しかしそのまま何も対処しないと、ママもパパも大変です。完全ミルクの場合はママとパパの担当の時間を決めて交互にミルクをあげることで、どちらか一方に負担がかかる、または共倒れを防げます。
混合ミルクの場合は母乳後のミルク担当はパパにする、寝る前は腹持ちが良いミルクだけにする、もしくは、母乳のストックを作っておいて母乳も哺乳瓶であげるといった工夫をして、疲れにくい授乳方法を模索してみましょう。
⇒記事「生後3ヶ月の授乳間隔・回数|短くなった・長くなったときの理由と対処法も解説」
生後3ヶ月の赤ちゃんの睡眠時間
生後3ヶ月になると、1日13~15時間ほど寝る赤ちゃんが多くなります。この時期になると、昼夜の区別がついてくることもあるので、なかには夜に4~5時間ほどまとまって寝てくれる子もいるでしょう。また、手足を動かせるようになり運動量が上がると、疲れから1回の睡眠時間も長くなります。さらにミルクやおっぱいを吸う力が強くなることで飲む量が増え、内臓機能の発達により授乳やオムツ替えの頻度が減ることで、大人の生活リズムに徐々に近づいていきます。
個人差はありますが、そうした成長に伴い、ママ・パパの睡眠時間も長くとれるようになるでしょう。しかし、まだまだ夜泣きなどで夜間対応が必要な時期ではあるので、育休をとって四六時中赤ちゃんの側にいることも多いママは、昼間に赤ちゃんが寝たら家事はそこそこに、一緒にお昼寝するなどして睡眠不足にならないような工夫が必要です。