アスリートの夫を栄養面で支えたい【村田英理子】

子育てはうれしいことや楽しいことばかりではなく、ときには悩んだり、孤独に感じることだってあります。

家族みんなが笑顔で心身ともに健康で過ごすためにも、ときには何かに頼ることも大事。

「the kindest mama」は、育児や家事、仕事を頑張る人たちのストーリーを通じて何かに頼ることへのネガティブな想いを減らし、愛するわが子の身体と心、家族の絆をつくる食育の大切さを伝える、世の中のママパパを応援するインタビュー企画です。


今月の「the kindest mama」は、プロラグビー選手の夫をサポートしながら2人の子育てに奮闘する村田英理子さん。

アスリートフードマイスター1級の資格を保有。離乳食は、3歳の長男と今月1歳を迎える長女の2回経験。「食事は習慣」と表現し日々の工夫をSNSなどで発信する村田さんに、子どもの食事を進めるうえで大切にしていることを伺いました。

海外生活や外国人と過ごして強まった日本人としてのアイデンティティ

生まれてからの四年半、父の仕事の関係でアメリカにいました。
ただ、幼少期のころだったので、当時はそれなりに英語を喋っていたそうですが、日本に来てからはすっかり忘れてしまい、中学から周りの子とほとんど同じように英語の勉強を始めましたね。

なんちゃって帰国子女という感じがもどかしくて、高校2年生の夏からアメリカに留学に行かせてもらい、1年間ホームステイをして過ごしました。

振り返ると、3きょうだいの一番下で育った環境からか、負けず嫌いな気持ちが常に原動力としてあったと思います。

帰国後は国際色豊かな大学に進学し、外国人や帰国子女の日本人に囲まれた生活をする中で、日本人としてのアイデンティティがさらに強くなり、日本を代表する大手鉄鋼メーカーに就職しました。

夫との出会い、芽生えたアスリートの妻としての自覚

夫とは大学の時に出会いました。当時はスポーツ選手がどれほど食に向き合っているかというのに触れる機会は、デートで一緒に食事をするときくらいしかありません。
大学生の時は、脂質カットを目的に、しゃぶしゃぶ食べ放題ばかり行っていましたし、初めて会った日の夫の第一印象は「この人、揚げ物食べずに枝豆ばっかり食べてる」でした(笑)

料理自体は小さい頃から好きだったのですが、一緒に住み始めてからようやく普段作る料理とは違うことを実感しました。
結婚したら「あなたはアスリートの妻です」とい言う肩書きを与えられたように感じちゃって、結婚してすぐは「頑張らなきゃ」という思いが強く、仕事もアスリートの妻としても両方の理想を追い求めていました。
そこから食事についての勉強を本格的にスタート。当時は海外営業の仕事していたのですが、勉強との両立が難しく、かなり忙しい日々を過ごしました。

通勤の電車の中で勉強したりと時間の使い方を工夫しながらなんとかやっていたのですが、半年が過ぎたくらいで「もうきつい」ってなっちゃって。
夫や周囲に相談すると「今まで一生懸命してきたことを急にやめるのはもったいないよ」と言ってくれたので、会社に相談。幸い、上司や職場の理解があり、極力残業しないように調整してくれるようになりました。

そこから両立がしやすくなり、がらりと生活が変わりましたね。栄養の知識が増えていくにつれ、日々の料理の負荷も減っていき、うまくバランスが取れるようになりました。

育児で学んだセルフコントロールの大切さ

1人目を妊娠したときは、なんとなく大丈夫だろうと思う一方で、初めてのことだらけでどこか常に不安を抱えていました。
一番は自分の体の変化に驚きましたね。かなり元気な妊婦だったと思うのですが、長男は14時間半かかって4300グラム超で生まれて…さすがにへとへとになりました。

幸い健康に生まれてきてくれ、妊娠前から継続して妊娠中も実践していた良い食習慣食事のおかげで、私の回復も早かったし、息子にも良い栄養が行き届いていたのかなと思っています。

育児が始まってからはうまくいかないことの連続。自分に余裕があるかないかで受け止め方が変わるなあと感じることが多いです。いかにセルフコントロールするかを考え続けている3年半でした。

その点、夫は長くスポーツをしていて、自分をコントロールする能力に長けているので、日頃の会話でも学んできたことがたくさんあります。

印象に残っていて私の日頃の心がけの大きな軸になっているのは「相手に期待をしすぎない」ということ。
「諦め」という意味で期待をしないわけではなくて、あくまで、自分は自分のやるべきことにフォーカスして、自分以外の事に対してはニュートラルな気持ちでいる、ということ。
相手や物事への期待が大きいとそれがかなわないときに「残念」「いらいら」などのネガティブな思いが生まれやすいですが、期待をしないで穏やかにいることで、少しの出来事にも感謝の思いが生まれるようになります。

それを意識するようになってからは、自分自身のコントロールがしやすくなり穏やかな気持ちでいられることが増えたので、大きな学びだったと思います。

夫とはお互いに補い合いながら、子どもを持つ親としてこの3年半一緒に奮闘しています。
基本的な役割分担は、夫は子どもと遊ぶのが本当に上手なので遊び担当、私は家事全般はじめお世話担当になっていますね。

息子はだんだん成長してきて、ラグビー選手であるパパも理解できているので、一緒に応援に行ったり、公園でラグビーをしたりするのも楽しいです。

子どもを育てながら、逆に子どもに育ててもらっていることもたくさんあるので、子育てって奥が深いなとしみじみ感じています。

やりたいことを仕事にする母親の姿を見てもらいたい

夫が現役のうちは、ラグビーに全力を注いでほしいし、私もその頑張りを応援したい。そのひとつの形が食事栄養面のサポートだと考えています。
アスリートを家族として支えていく中で、「トレーニングの成果を無駄にしたくない」「より食事を大切にしたい」という気持ちが強くなりました。

私は結婚してから栄養について学んで、ありがたいことに自分自身の学びや経験を、そのまま仕事にすることができています。
結婚以来、夫から「好きなことを仕事にすればいい」と言われ続けてきていることも、育児と仕事を両立できている今の仕事スタイルに繋がっています。

今は、日々夫の食事について発信することが仕事の一つ。良い意味で公私混同しまくっています。
子どもたちには自分の興味があること、やりたいことを仕事にしていて楽しそうだなと思ってもらえたらうれしいですね。


<プロフィール>
村田英理子
GOOD HABITアドバイザー

プロラグビー選手の夫 村田毅(むらたつよし、花園近鉄ライナーズ)の食事サポートをしながら、より多くの人に、その人なりの「GOOD HABIT良い食習慣」を見つけてほしいと願い、SNSで暮らしの工夫を発信。海外営業職とアスリートサポートを両立する中で確立した、シンプルで効率よく質の高い食事を作るメソッドや、実生活に寄り添ったレシピは、運動習慣のある人だけでなく料理初心者にも好評。企業や教育機関での講演活動やコラム執筆など幅広く手掛ける。

「良い習慣は、良い空間から」という思いで、良い食事を作り出すためのキッチンや、食卓まわりなどの空間も含めた食習慣のトータルプロデュースも手掛ける。

▶️Instagram:@athlete.food_eriko.murata
▶️Twitter :@erikome1104

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